最後の最後。

桂米團治襲名披露in大阪松竹座大阪松竹座
昨年10月4日の京都南座から始まった襲名披露公演のファイナル。
計77公演も行ったらしいが、その中の3回も行った私もいい感じだぜ、と思う。今回は「ちりとてちん」で若干落語に興味を持った嵐FCを連れて行ってみました。でも、最後の最後だというのに嵐FCに一番見てほしかった、肝心の人間国宝桂米朝師匠が熱で入院のため、中入り後の挨拶には欠席。正直、息子の襲名披露とはいえ、私の中でのご本尊は米朝師匠以外にあり得ないのでショックを隠しきれない感じだったけど、五代目・米團治曰く「最後くらいは1人でやらんかい、という意味だと思います」という憎い返し。
今回は、前回までに行った2回とは異なり、浪花の大御所である桂春團治と4代目米團治を知る、笑福亭松之助が演じた。感想は後述しますが、最後の最後とは知らずにノリで取ったチケットだったので、かなり得した気持ちで楽しめた。でも、中入り後、赤絨毯の上に手をついて低頭している中に米朝さんがいないのは淋しかった、それだけ。
【出演】
桂 紅雀
桂 千朝
桂 南光
笑福亭 松之助
― 中入 ―
桂 米團治 襲名披露 米朝一門御礼ご挨拶
桂 春團治
桂 米團治
最初の3名、一緒くたにしてしまって申し訳ないけど、しれっとうまい。そこに「情」があるかと言われると、いやあ…という感じで、単純に一過性の笑いなのかな。一過性の笑いではないというのは、もう1度聞きたくなったり別の人が演じている同ネタを聞きたくなったりすることで、正直そこまではいかないし、その人の落語を聞くために寄席へ足を運ぶのか?と問われるとそうでない、というところ。
笑福亭松之助は、長年聞いてきた人やそのネタの展開を知っている人が見たら面白かったのかもしれない。松之助素人の私にとっては、単純に「何言ってるかほとんど聞き取れない」というだけ。今となっては、キャリア(歴史)だけがこの人を支えているのではないか、という気持ちだ。特に私なんかみたいな、寄席素人にとってはカツゼツって死活問題で、本当に大事だと思う。
その点、(男の)色気・渋み・男気という3拍子が揃ってるように感じたのは、春團治。カツゼツあまり良くないんだけど、動作や抑揚で笑いを誘う。南光さんみたいにドッカーン!とは来ないけど、ジワジワニヤニヤしてしまう感じ。どちらかといえば丸みのある芸の米朝・しゃなりとしてる米團治にはない、大阪の男っぽさがこの人にはあるなあ、と思った。色っぽいんだよね、なんか。
で、もちろん大トリの米團治は「くっしゃみ講釈」。ネタ名は知っていたものの、CD・DVDでは聞いたことがなかったので「コレがあの『くっしゃみ講釈』かー!」ってなってたわけですが、そう思ってる間にずんずん引き込まれ、後半のくしゃみをしまくるところで面白すぎて堪え切れなくなった。「七段目」「親子茶屋」しか生で聞いたことしかなかっただけに、こんな面白度合いが高いネタもこなすんだなあ、と感心。まあ「お前何様やねん!」と言われそうなくらいの高い目線から書いてしまったけど、今日の私の中では1番だった。
最後、いつもなら幕が下りると同時くらいにみんな帰り出すのに、今日に限っては拍手が鳴り止まなかった。したら、もう1度幕が開いて、米團治さんのお礼の言葉が!うわー!アンコール的な!と感嘆しまくる私であった。まだ50歳。これからが脂のノリノリな、あなたの時代が来ることを願っております。親父さんを超えられる日が来るまで、私は応援したいと思う。
落語って、本当にいいものですね。